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ニュースリリース

2016/02/23

新しい耐熱膜、「TR-Flat」を開発
-高張力鋼板用プレス金型や鍛造金型など、過酷な成型条件でも寿命向上-

 トーヨーエイテック株式会社(本社:広島市南区、社長:成沢信彦)は、金型用の新しい耐熱膜「TR-Flat」(特許出願中)を開発し、本格的な販売を開始しました。TR-Flatは耐熱性(耐酸化性)や破壊強度に優れるため、成型時の高温発熱や強い衝撃が発生するような過酷な条件下の使用でも、金型寿命の向上が可能です。

 自動車業界では安全と環境への配慮から、高強度・高剛性化と軽量化とを両立する材料の使用が増えており、その一つとして高張力鋼板の採用が拡大しています。高張力鋼板は通常の鋼板よりも強度が高いため、成型時には金型に高負荷がかかるだけでなく、局所的に高温の加工熱が発生します。その結果、通常の硬質膜をコーティングしていても、高熱による膜の酸化により性能が劣化し寿命が短くなるため、耐熱性の高い硬質膜(耐熱膜)の需要が高まっています。

 一般的にPVD(物理的蒸着法)は炉のタイプやコーティングレシピ等によって、形成する膜の特性が大きく変わります。今回のTR-Flatは、同社製のアークイオンプレーティング式PVD炉(TF-778N)を利用して開発した、耐熱性に優れたAlCr(アルミクロム)系の膜です。高速で緻密な膜を形成できる炉を使用し、コーティングレシピを最適化することにより、1000℃の耐熱温度に加え、高密着性、高硬度、高靭性、低摩擦係数といった優れた特性を実現しています。これまで「低温TiC」ではカバーできなかった、より強度の高い高張力鋼板用のプレス金型や、加工条件の厳しい鍛造用金型にも適用範囲が広がります。

[TR-Flatの特長]

1.耐熱温度1000℃

金型には生産性や寿命向上を目的として、金型表面にコーティングする様々な硬質膜が用意されています。高温下では、膜の酸化による性能劣化が進むため、酸化による性能劣化のない、もしくは酸化の少ない膜が必要となります。TR-Flatは、表層部にAlCr系の膜を形成しています。耐酸化性と高弾性率とを両立させる組成配分とするとともに、最表部にはあらかじめ酸化物の層を形成するなど、耐酸化性を大幅に高めました。これにより、1000℃の過酷な環境下でも性能劣化が少なく、金型寿命を延ばすことが可能になりました。

2.長寿命

PVDは金型母材への密着力が劣るため、TR-Flatでは最初に密着性に優れ、硬度傾斜をもたせた中間層を形成し、その上に表層部を形成することで高密着力を実現。さらに、独自のPVD炉(TF-778N)と最適なコーティングレシピにより、膜の結晶構造を最適化しています。その結果、低摩擦係数に加え、硬度と靭性とを高次元で両立させることが可能となり、膜の破壊強度を飛躍的に高めることに成功しました。優れた耐熱温度に加え、硬くて滑りやすく、しかも破壊しにくい特長を有するTR-Flatは、高張力鋼板用プレス金型や冷間鍛造用金型へ試験的に採用されており、着実に実績を積み重ねています。

 トーヨーエイテックは、1968年に日本で初めてCVD(化学的蒸着法)コーティングを導入したメーカーであり、現在ではCVDに加えてPVDや超大型のPPD(Pulse Plasma Diffusion (窒化の一種) )設備を有する総合コーティングメーカーです。PVDコーティングは市場が拡大していますが、各社ともに新商品や戦略商品の投入等で競争が激化しています。同社では2014年にPVD炉(TF-778N)を自社で開発し、低温TiCの商品力アップに加え、新商品の開発に取り組んできました。今回のTR-Flatはその設備を使って開発した戦略商品の第一弾であり、今後も魅力的な商品を開発し、商品力のさらなる強化を図っていく予定です。

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