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ニュースリリース

2008/11/11

トーヨーエイテック、日本初のPPD処理炉が名古屋工場で本格稼動
-大型プレス金型の寿命を飛躍的に向上させる、日本最大級の超大型窒化炉 -

  トーヨーエイテック株式会社(本社 広島市南区、社長 龍田康登)は、予てより建設を進めていたPPD(Pulse Plasma Diffusion)処理専用工場の竣工を祝い、本日、新設備となるPPD処理炉の火入れ式を開催した。PPD処理は金型の寿命を飛躍的に延ばす硬化処理技術であり、同社では新たな需要が見込めると判断し、今春から名古屋工場内に専用工場の建設とPPD処理炉の設置を進めていたもの。式典には内田副社長を始め役員や名古屋工場の社員が出席し、日本で初めてとなるPPD処理炉の本格稼動を祝った。

 PPD処理はドイツのエリコンバルザースVST社が開発した独自の技術で、真空中でパルス放電によりプラズマを発生させ金型などの金属表面に窒素・炭素・酸素を侵入拡散させる窒化処理の一種である。トーヨーエイテックが導入したPPD処理炉は炉内寸法がφ3.7m(内径)×10m(長さ)の超大型設備で、窒化炉としては日本最大級となる。従来は硬化処理できなかった自動車外板用金型のような大型プレス金型でも処理できる能力を有しているのが大きな特長である。

 これまで、自動車の外板パネルのような大型プレス部品は金型そのものも大型となり、窒化やハードコーティングできる設備がなかった。そのため金型の寿命を延ばすには、金型に硬質クロムなどのメッキ処理を施すのが一般的である。しかし、メッキ処理は金型の表面に金属の膜をつける処理であるため、次のような課題があった。[1]強度の厳しい部位では剥離等が発生し、再メッキ処理が必要になる。[2]膜厚によって金型の凸型と凹型との隙間が変化し、処理後の金型調整に時間がかかる。[3]メッキ部への溶接ができないため、肉盛溶接などの金型補修の際にはメッキを剥がす必要がある。

 PPD処理では、約500~550℃の低い温度(母材の変態点以下の温度)で金型そのものを硬化させるため、寿命が飛躍的に延びるだけでなく、寸法精度の維持が可能であるのが特長。しかも補修性が高く、メッキ処理と異なり廃液を出さないため、地球環境にも優しい技術である。クロムメッキ処理と比べて遥かに性能の勝るPPD処理は、既にエリコンバルザースVST社のヨーロッパ工場とアメリカ工場で稼動している。環境問題への意識の高まりもあって、欧米の自動車メーカーで採用が進み、4年で3,500型以上の実績がある。日本ではトーヨーエイテックが初の導入となるため、国内の自動車メーカーや金型メーカーを中心に、本格的に営業活動を進める。

■PPD処理炉の諸元

・炉内寸法(内径×長さ): φ3.7m×10m

・設置寸法(幅×奥行×高さ): 25m×8m×6m

・最大処理重量: 40ton

■PPD処理の主な特長

優れた処理能力(大型金型が2型同時処理可能)

PPD処理炉は、炉内寸法が内径φ3.7m、長さ10mの超大型サイズで、窒化炉としては日本最大級である。そのため、メッキ処理やフレームハード(火炎焼入れ)しかできなかった自動車外板用金型の硬化処理が初めて可能となり、ボディサイドパネル用の大型金型でも2型を同時に処理できる。

金型の長寿命化

PPD処理は金属の表面に硬い化合物層を安定的に形成するため、耐圧強度が向上する。自動車外板用金型で一般的に使用されるFCD(球状黒鉛鋳鉄)やFC(片状黒鉛鋳鉄)の場合、Hv900~1200の硬度を有した化合物層が表面から0.005~0.02mmまでの深さで形成される。さらに、化合物層直下には拡散層が形成され、平均0.1~0.2mmまでの実用窒化深さ(母材硬度+ Hv50までの深度)が維持される。PPD処理は金型母材そのものを硬化させる処理であり、メッキのように剥がれることはないため、金型の寿命が飛躍的に向上する。半年から1年くらいで再クロムメッキ処理が必要となる金型の場合でも、PPD処理後4年で再処理が必要になった例は発生してない(海外で3,500型以上の実績)。

形状精度の維持

金型母材の変態点よりも低い温度で処理するため、寸法精度の維持が可能である。しかも、メッキのように金型の上に別の材料をコーティングするわけではないため、凸型と凹型との隙間が一定に保てるので金型調整が容易である。また、メッキ処理が苦手とするシャープなエッジ部も、形状を維持したまま処理できる。

補修性がよい

メッキ処理した金型の場合、メッキ部への肉盛溶接ができない。そのため、肉盛溶接が必要な補修の際はメッキを剥がさなければならず、時間とコストが必要となる。PPD処理では、処理後の金型に直接肉盛をすることができるため、金型の補修性が非常に高い。 長寿命で補修作業が容易なため、設備の整っていない海外の工場で使用する金型にも有効な処理である。

環境に優しい技術

クロムメッキは6価クロムの廃液処理が必要であるが、PPD処理は廃液を出さないため地球環境に優しい技術である。

「PPD」の製品情報