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ニュースリリース

2007/4/19

プレス金型の寿命を格段に高めるコーティング、「低温TiC」を開発
~プレス金型の寸法・形状精度が高く、耐摩耗性に優れたコーティング~

  トーヨーエイテック株式会社(本社:広島市南区、社長:龍田康登)は、プレス加工に使用する金型に適したコーティングを新たに開発し、本格的に発売を開始する。同社が開発したのはPVD(物理的蒸着法)コーティングの新膜「低温TiC」(特許出願済)。CVD(化学的蒸着法)で定評のあるTiC(炭化チタン)を低温処理で金型にコーティングするため、コーティング後の金型の寸法・形状精度が高く、耐摩耗性に優れているのが特長である。

 金型の表面にコーティング(硬質膜を蒸着)する方法として、一般的にCVDとPVDの2つの処理方法がある。CVDは膜の密着性が良く、複雑な形状でも膜のつきまわり性が優れる。中でもTiC膜は硬くて滑り性が優れているため、高張力鋼板用のプレス金型など高負荷のかかる金型に使用されることが多い。一方、PVDは膜の密着性やつきまわり性が劣るものの、処理温度が500℃以下の低温(CVDは1000℃程度の高温処理)であり、熱変形が少なく寸法・形状精度が高い。そのため、一般的に処理後の金型寿命はCVDの方が優れているが、精度の面からPVDをプレス金型にコーティングするケースが増えてきている。

低温TiCの特長

  1. プレス金型の完成後、短期間で量産に移行可能

    PVDによる約500℃の低温処理のため、CVDのようにコーティング後の熱処理を行う必要がない。そのためCVDと比較して

    [1]コーティングに要する期間が短い、

    [2]金型の形状や精度を維持できるため、金型を元の状態に組み付ける際の組付け調整が不要、

    [3]同様にプレス加工製品の寸法・形状精度が高い、

    などの特長を有する。その結果として、寸法・形状精度の高い製品を、短期間で量産に移行することが可能となる。

  2. 長寿命化

    PVDでは金型母材へのTiCの密着力が劣るため、最初に密着性の優れた膜を形成している。その上の最表層に硬くて滑り性に優れたTiCを単膜で数μm形成している点が、低温TiCの大きな特徴。

    PVDの中でも硬度が高いとされるP-TiCN(炭窒化チタン)と比較しても1.3倍近くの硬度を有しており、CVDのTiCと同様、硬くて滑り性に優れた特性をもち、耐摩耗性が極めて高い膜である。膜の密着力もP-TiCN比1.3倍である。既に一部のメーカーで量産型を使用して耐久性をテストしており、順調に推移している。

 トーヨーエイテックは、国内トップシェアの内面研削盤を主力商品とする工作機械事業をはじめ、表面処理事業、自動車部品事業の3事業を展開している。同社は1968年に日本で初めてCVDコーティングを導入したメーカーであり、現在ではPVDの新商品開発にも注力している。今回の低温TiCの開発はその一環であり、当面は3月より稼動した名古屋工場の増設炉で低温TiCの処理を行う。また、4月25日より東京ビッグサイトで開催される「インターモールド2007」に出展し、パネルやサンプルワークを使って低温TiCを広く紹介する(小間番号:東5ホール511)予定である。

「低温TiC」の製品情報